紫外線・UVカットの話 -4- UVカットウェアって、どう選ぶ? カット率だけじゃダメ!

前章まで、紫外線って何故危険視されるのか、紫外線ををどう防ぐか、UVカットウェア以外でのお話をしました。

本章から読み始められた方もおられると思いますので、前章までのまとめを簡単に・・・

 

前章までのまとめ;なぜUVカット?

大きなポイントは2つ!

お肌の「老化」と「ガン化」です!

紫外線の中では比較的に波長が長いUV-Aは、生体への作用は比較的マイルドですが、地表への到達量が多く、皮膚深部へ浸透しやすいため、「しわ・しみ等の肌老化」の原因として問題視されます。

やや波長が短いUV-Bは、細胞への作用が強く、たんぱく質やDNAに直接吸収され、「皮膚ガン」などの原因になると考えられており、非常に注意が必要です。

ただ、最近は、UV-Bに限らず広範な紫外線が体内に活性酸素を発生させ、活性酸素を介して細胞を攻撃する現象も注目されており、「UV-A,Bをトータルに防ぎ、肌の老化・ガン化を予防するべき」と言われるようになっています。

 

前章までのまとめ;紫外線をどう防ぐ?

まずは「帽子や日傘」でカットしましょう。

ただ、紫外線は散乱されて光が回り込みやすいので、帽子や日傘を差しても1/3~半分はお顔に当たってくると考えてください。

そこで、「日焼け止め」ですが、お肌に直接つけるものですし、少し慎重に選んでくださいね。

日焼け止めは、「紫外線散乱材」や「紫外線吸収剤」をオイルや水に配合したものです。紫外線吸収剤は、紫外線のカット性能は高いのですが、分解して皮膚を刺激する場合があります。

“日焼け止めは必ずしもカット率(SPFやUA)が高い方がいいわけではない”、とか、

“カット率が高い日焼け止めはお肌には良くない”、とか言われるのは、

『薄塗りでもカット率が高いものは、一般に「紫外線吸収剤」の割合が高く、光化学反応による分解生成物がお肌を刺激する場合があるから』なのです。お肌との相性もあるので、日焼け止めは慎重に使用しましょう。

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さてさて、ここからUVカットウェアの話です。

私たちは「UVカットウェア」を扱っているので、ここがメインです。 話も長いです。

我慢の程、宜しくお願いします。

 

UVカットウェアは、日焼け止めと比較するとお肌へのリスクは随分小さいので、だいぶ安心して使って頂けます。

でも、UVカットウェアにも薬品処理をしたものがあります。

また、暑い時期に身に纏いますから、生地によっては非常に暑苦しいことになります。

そこで、UVカットウェアを選ぶにあたっても、ある程度、知識をもって選びましょう。

 

「UVカット素材はカット率だけじゃダメ!」

UVカットを意識して、ウェアやストールを(あるいは帽子や日傘も)購入するときも、まず「UVカット率」を見てしまいますよね。

ひょっとしたら、綿素材がお肌にいいという印象が強い方も多いので、「綿100% UVカット加工済」を探す方もおられるかもしれません。(実は、日本と中国は特異的に“コットン信仰が強い”と言われています。)

それでいいのでしょうか・・・

 

UVカット素材(生地)のUVカット性能と言うのは、

「繊維自体のUVカット性能」と「生地の厚み・織り方」で決まります。

一般に、「綿」などは紫外線のカット性が低いのですが、それでも、目が詰まった織り方をしたり、生地をどんどん厚くしたりすれば、UVカット率は高くできます。

でも、それでは夏は暑くてたまらないんですよね。

そうなんです! 大事なのはココです。

「UVカット素材は、UVカット率だけではなく、着心地とのバランスです!」

つまり、「いかに通気性が良くて、かつ、UVカットするか」が大事なんですよね。

 

衣類をよく見てみましょう。もちろん、いろんな形に切った布を縫い合わせて作ってありますね。

では、その“布”をよく見てみましょう。

どれも糸を織って作ってありますよね。布の種類によって、太い糸だったり、細い糸だったり・・ふわっと織ってあったり、しっかり織ってあったり・・・

この織り方で布の性質もだいぶ変わります。

今度は、その糸を見てみましょう。

よく見ると、1本1本の糸は、細い繊維をよりあわせて糸にしてあるんですね。

この繊維の材料が何かによって、紫外線をカットしたり・・汗を吸ったり・・、

やはり、布の性質はだいぶ変わります。

つまり、布の「素材と織り方・厚み」が、生地のいろんな性質を決める大きなファクターです。

 

布の性質を、繊維の素材で見ると、例えば、・・

・綿だと、汗をよく吸いますが、紫外線はよく通してしまいます。

・ポリエステルだと、汗は吸いませんが、紫外線をよく吸収します。

(というのが昔の常識でしたが、最近はちょっと違ってきています。確かにポリエステルは繊維自体はほとんど水分を吸収しないのですが、最近は繊維の断面を工夫して、“毛細管現象”で服の内側の水を吸上げ服の外側で発散させる繊維が増えてきました。元々、ポリエステルが水を吸わない点は、汗を多くかく時期でも綿の生地のようにベッチョリならないため、逆に利点になる場合もあったのですが、最近は速乾・吸汗機能を高める形で、とくに快適性が高まりました。)

 

せっかくなので、ここで、UVカット(吸収)する繊維をあげますと、例えば、ポリエステル、ウール、などです。

逆に、あまりUVカットしないのは、綿、麻、ナイロン、などです。

では、このような材料でどうやって使いやすいUVカット生地にしているのかを次に見てみましょう。

繊維にも色々ありますが、ベビーウェアとして、赤ちゃんのお肌に触れたときの安心感を考えると、どうしても

綿・麻のような植物系の天然素材や、

化学繊維としても安心素材のポリエステルが、やっぱりベースになるんですよね。

(日本では化学繊維は“安心・安全”イメージが薄いかもしれませんが、ポリエステルはPETボトルと同じ化学構造でほとんど溶出成分がでない安心素材です。人の味覚は凄く鋭敏で、PETボトルから変なものが出ると、PETボトル入りの水を飲んだ時にすぐに違和感を感じてしまいます。PETボトルの水はほとんど味を感じませんよね。つまり、それほどポリエステルは安心な素材なのです。)

 

でも、上に書いたように、

綿だけだと、汗をよく吸いますが、紫外線はよく通してしまいますので、綿の素材で紫外線をカットしようとすると生地が厚くなってしまいます。

また、ポリエステルだけだと、紫外線はカットしますし、速乾性も持たせることは出来るのですが、繊維自体は汗を吸いませんので、(スポーツウェアとしては素晴らしいけれども)ベビーウェアとしては肌触りが今一つです。

そのため、まず主流になったUVカット素材は、化学処理液でUVカット加工した綿でした。

 

「綿100%のUVカット生地」;薬品処理でUVカット機能を付与

先に書いたように、綿は素材としてのUVカット機能が高くありません。

どうしてもUVカットしようとすると暑苦しいし、涼しくするとUVカットできないし・・・となってしまいます。

そこで、綿の生地を(あるいは糸の段階で)薬品処理をするようになりました。

薬品処理と言っても、生地ごと薬液に漬け、繊維一本一本の表面に紫外線を吸収する紫外線吸収剤を固着させ洗浄し、余分な薬品を洗い流して乾燥させた状態です。

これで生地のUVカット性は非常に向上しますので、比較的薄手の生地でも高いカット率を示すようになります。

また、処理も簡単なため、比較的安価ですし、本来のデザインを邪魔しません。

しかし、繊維の表面に薬品の成分をコーティングしただけなので、カット率が安定しにくかったり、洗濯のたびに繊維表面の処理皮膜が落ちてしまうため、カット率は段々落ちていきます。

それと、個人的な印象ですが、このタイプの生地は、「綿100% UVカット処理済」と表示されていることが多いのですが、「綿100% UVカット処理済」と書いてあると、ナチュラル感・天然素材感を感じて購入される方が多いです。

しかし、実際には化学薬品(もちろんちゃんと検査で安全性は確認されていますが)を使っていて、それが肌に直接触れていることにちょっと矛盾は感じますね・・・

 

「Snug as a BugのUVカット生地」;綿とポリエステルのさらふわ生地

現在、UVカット性能、通気性、肌触りなど、非常にバランスの良い素材として、とくにスポーツ用として、ポリエステル繊維の人気が非常に高まりました。

実はポリエステルはメインの分子の並び(主鎖)にベンゼン環があり、「化学薬品などで処理しなくても紫外線をよく吸収します」。しかも、元々分子が大きく安定なので、日焼け止めの紫外線吸収剤と違い、「光化学反応で刺激性の低分子物質が発生したりしません」。

また、ポリエステルは、PETボトルに使われていることからわかるように、有機溶出物がほぼ検出できないほど「安心・安全」な素材です。(実は人の舌は非常に鋭敏で、GC-MSなどの高性能な分析器で検出できるかどうかの微量の不純物が水に入っただけで気付いてしまうのです。)

ただ、ポリエステル100%の生地をベビーウェアに、というのは、「肌触り」の点や、「赤ちゃんはずっと寝ていて、ウェアがずっと布団と体の間にある」ことから、ママはちょっと抵抗があります。

そこで、最近は、ベビーウェアや大人のルームウェアとして、綿とポリエステルをあわせてふんわり織り上げた素材が、評価が高くなっています。

「Snug as a Bug」の生地が、昔からず~っと、まさにソレです。

綿とポリエステルの混紡品は、UVカット性能、通気性、肌触りなどのバランスが非常によいため、紫外線が強いだけでなく、意外に蒸し暑い地域も多いオーストラリアでも非常に人気が高いです。(オーストラリアはカラッとしたイメージですが、広い熱帯雨林があります。)

日本や中国ではまだまだ“コットン神話”が根強く、天然素材に拘る方も多いのですが、素材技術は非常に進歩しているので、是非、このような高性能な混紡素材もトライしてみて下さい。

 

もう少し詳しい素材の話を知りたい方に;

話は長くなりますが、素材の話をもう少しお話しますね・・・(結構難しいので、ホホ~・・と読んで下さい。)

 

前章の「日焼け止め」の「紫外線吸収剤」についての話の中で、物質の構造によって吸収する電磁波の波長があるんですよ・・とお話ししました・・

素材には、金属(鉄やアルミ・・・)、無機材料(セラミックなど・・)、有機材料(プラスチックや化学物質ですが、人の体も有機物が多いですね。生体高分子という言葉もあります。)などがあります。赤外線、可視光線、紫外線くらいの強さの電磁波は、金属などには反射されて透過していかないのですが、有機物には吸収されやすいです。ただし、構造によって極端に吸収される波長があり、吸収ピークとか吸収端なんて言ったりします。

生き物の体を作る生体高分子がちょうどUV-Bを吸収するため、人の体に危険な反応が起きるし、

同じUV-Bを吸収するポリエステルで日除けをすると効率よくUVカットができるというわけです。

 

さて、これが、綿の主成分である「酢酸セルロース」の化学構造です。

比較的複雑な化学構造をしていますが、とくに紫外線を吸収するような構造部分はありません。

 

一方、これがポリエステル(代表的なPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維)の化学構造です。

実は、ポリエステルが化学構造として持ってるベンゼン環(亀の甲羅と呼ばれるとこです)の2重結合は紫外線辺りの電磁波と電子振動の波長がよく合うため、紫外線をよく吸収するのです。

上の「酢酸セルロース」にも亀の甲羅みたいな六角形があるじゃないかと思われるかもですが、酢酸セルロースには2重結合がないのです。ここの共鳴電子と呼ばれる、ベンゼン環をある波長で飛び回っている電子の、その波長がちょうど紫外線と合うもんだからポリエステルのような構造のものは紫外線をよく吸収するのです。

しかも都合がいいことに、とても大きな安定分子のメインの化学構造(主鎖)の中で吸収するので、さほど光化学的な不安定化も生じず、「日焼け止め」の紫外線吸収剤で問題になるような、お肌を刺激する低分子化合物をほとんど生成しません。

もともとPETボトルと同じ化学構造で、「変な化学物質もほとんど出てこない」ような安全な素材ですので、非常に安心感があるのです。

そのため、ポリエステルを用いたUVカット素材は、「洗濯してもUVカット性能が低下しません」し、「お肌への悪影響も少ない」と言われるのです。

さらに、「Snug as a Bug」の生地は、「UVカットポリエステルを綿と一緒にして(混紡)」、「独特の柔らかい織り方」で織りあげてあるのです。

綿と混紡し、立体的に織りあげることで、「UVカット性能(SPF30+相当)と通気性・肌触りを両立」させています。

 

実は、糸を作る時は、その性質をイイトコ取りするために、2種類以上の繊維をあわせてよりあわせることも多いです(混紡)。○○ 70%、△△ 30%・・というと、大体、この割合に混紡した糸にして織って布にしていることが多いのです。

「Snug as a Bug」の生地は、私たちも使っていますが、本当にいろんなイイトコをバランスよく集めた、イイ生地ですね。

これもUVカット先進国、オーストラリアならではなのでしょうか・・・イイ感じです。

 

 

いや~、最後まで読んで頂いてありがとうございました。

こんだけブログに長文書くとすがすがしいですね~

ちなみに、前章 「・・・」はこちらから

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「Snug as a Bug」等の生地特性計測は、福岡県工業技術センター 化学繊維研究所において技術指導・相談下で行っています。

また、記事をまとめるにあたり、下記の書籍・文献を参考・引用しています。

 

独立行政法人 国立環境研究所編 「絵とデータで読む 太陽紫外線 ―太陽と賢く仲良くつきあう法―」(東海大学総合科学技術研究所 佐々木政子 著)

「着るもので差がつく汗対策 平田耕造」(文 河合香織)ヘルシスト208,vol.35, No.4 July-August, 2011

佐々木政子 (2001) 光とからだ -目と皮ふへの作用-、運動生理学、11/12,4.

坂田俊文、佐々木政子 (1978) メディカルフォトケミストリー -光化学療法について-、化学工業、 29(3),309-316.

松尾 (2000) 3-1 光ではじまる皮膚障害-  サンバーンとサンタン、光が拓く生命科学 第4巻 生物の光障害とその防御機構、日本光生物学協会編、共立出版、65-79.

上田正登 (1999) 紫外線と皮膚がん、遺伝、53(5),25-29.

 

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