紫外線・UVカットの話 -3- 紫外線って、どうやって防ぐの?

前章までで紫外線の危険性は、「ほ~、そういうことだったのね・・・」という感じになって頂けたと思うのですが、次は「じゃあ、どうやって防ぐのか・・・」です。

本章から読み始められた方もおられると思いますので、前章までのまとめを簡単に・・・

前章までのまとめ;なぜUVカット?
紫外線は生命の細胞に与える影響が強く、太古の地球で生命が海から地上に上がることができたのも、酸素が発生しオゾン層が形成されUV-BやUV-Cが地表に届かなくなったためとも言われています。
しかし、近年、オゾン層の破壊に伴い、地表まで到達するUV-Bなどの紫外線量が増加。
オゾンホールのあるオーストラリアを中心に、明確な「皮膚がんの増加」などが確認され、紫外線の害が問題視されるようになりました。
お肌への紫外線の害はとくに注意が必要ですが、大きなポイントは2つ!
お肌の「老化」と「ガン化」です!
紫外線の中では比較的に波長が長いUV-Aは、生体への作用は比較的マイルドですが、地表への到達量が多く、皮膚深部へ浸透しやすいため、「しわ・しみ等の肌老化」の原因として問題視されることが多いです。
やや波長が短いUV-Bは、細胞への作用が強く、たんぱく質やDNAに直接吸収され、「皮膚ガン」などの原因になると考えられており、非常に注意が必要です。
ただ、最近は、UV-Bに限らず広範な紫外線が体内に活性酸素を発生させ、活性酸素を介して細胞を攻撃する現象も注目されており、「UV-A,Bをトータルに防ぎ、肌の老化・ガン化を予防するべき」と言われるようになっています。
(UV-Cは、さらに危険な紫外線ですが、いまだ地表にはほとんど到達していません。)

紫外線をどう防ぐ?
では、どうやって防ぐのか、具体的に見ていきましょう。
まず思い浮かぶのは「日焼け止め」かもしれませんね。
でも、「できればお肌に直接塗るのはなるべく少なくしたい」という方が多いですし、「日焼け止め」以外も含め「バランスよく紫外線を防ぐ」というのが大事ですよね。
UVカットの基本は「外側から防いでいくこと」(体から離れたところの要因から考えて防ぐこと)と言われます。
つまり、「家や木陰に入る→日傘・帽子を使う→ウェア類(ストールやアームカバー含む)を着る→日焼け止めを塗る→食べ物・飲み物で回復を促す」です。(食べ物・飲み物は今回は割愛しますね。)

なので、まずは「家や木陰に入る」。言い換えると、「必要以上の直射日光は避けること」。
一番いいのは、「炎天下の外出は避けること」
でも、精神衛生的にも、天気がいいとお外に行きたくなります。ましてや、子供がいると外出は必至。とくに子供にとっては、「体力をつける」ことも重要ですしね。
なので、“「日傘」や「帽子」によるUVカット”が重要になってきます。

「日傘」や「帽子」によるUVカット;どれくらいカットできるの?
で、「日傘」や「帽子」によるUVカットです。まずはこれらでカットしないといけません。
でも、「日傘」や「帽子」で、どのくらい紫外線を防げているのか見てみましょう。

その前に、ちょっと大事なデータがあります。紫外線の特徴をよく表しているのですが、
「直射日光を遮った時、どのくらい光が回り込んできているか」のデータです。
下のグラフの、赤線が直射日光と回り込んできた光(散乱光)の全光量、黄色線がそのうちの散乱光の分の光量です。
日射(赤外線、可視光を含めたほぼ全ての光量)、UV-A、UV-Bでグラフ化してあります。
日射の場合、可視光が大部分のため、散乱光の割合は低く、直射日光を避ければ、かなりの光はカットできているのがわかります。
しかし、UV-AやUV-B、とくにUV-Bは散乱光の割合が高く、直射日光を遮っても、かなりの割合が回り込んできてしまうことを示しています。
このようなデータは、散乱されやすい紫外線をカットする際の注意点を顕著に示唆しています。
すなわち、「日傘や帽子で直射日光を避けても、目に見える印象以上に、紫外線は意外に回りこんできて、お肌に当たっている」ということです。

では、実際の「日傘や帽子の効果」を見てみましょう。

上図が日傘、下図が帽子の場合の「UVカット効果」を示しています。
もちろん多くの(“半分~三分の二”の)紫外線はカットされますが、紫外線は散乱され照返しなどで回り込む量が多いため、
「日傘や帽子だけでは紫外線を十分カットしきれない」ことがわかります。

なお、以前、「UVカットには、白い生地より、黒い生地の方が良い」と言われた時期があります。
確かに黒い生地は、とくに顔料系インクでプリントや染色を施した時など、UVカット率も向上します。
しかし、一般的に、差が出るのは綿などの元々UVカット効果の低い素材の場合で、ポリエステルなどのUVカット効果の高い素材では、その差は非常に小さくなります。
しかも、黒い素材は熱をはらむ効果も大きいので暑い夏の使用はあまりお勧めしません。
なので、「UVカット素材であれば元々カット率は高いので、色はあまり気にしない方がいい」と思います。

となると、次は「UVカットウェア」。そして最後に「日焼け止め」となります。
「UVカットウェア」(ストールやアームカバーを含む)を考える時、お肌に直接触れて体を覆うため、「UVカット素材(生地)」が非常に重要になります。
「UVカット素材(生地)」による「UVカットのしくみ」を考える時、実は、「日焼け止め」の仕組みが非常に参考になります。
「日焼け止め」は身近でイメージもしやすいので、ここでは「日焼け止め」の仕組みを先にご説明しますね。
では、「日焼け止め」のお話~

「日焼け止め」によるUVカット
「日焼け止め」は、まず「使い勝手」を考えてしまうので、どうしても「サラサラタイプ」「ジェルタイプ」「(メイクの上から使える)スプレータイプ」などの「使用方法」や「使用感」に目がいってしまいます。これらは、使い勝手としては重要ですが、通常の化粧品の延長線上にあり、自分の使い方にあわせてサンプルなどでお肌やメイクとの相性を確認してお使いいただければいいかなと思います。
ただ、もう一つ、日焼け止めの「機能や成分」と密接に関係し、その意味を知っていたほうがいいポイントがあります。
「ノンケミカルタイプ」・・・ という表示を、みなさん、見たことがあるのではないでしょうか・・・
あるいは、「紫外線吸収剤不使用」とか、(最近は減りましたが)「マイクロカプセル入り」とか・・・

これは、日焼け止めの機能や成分に関連しており、成分によっては、お肌が弱い方が“かぶれ”たりする要因になりやすいため注意が必要です。なんとなくでもいいので知っておいておいた方がいいポイントです。

日焼け止めというのは、紫外線をカットする、「日焼け止め成分」を液体やクリームなどの“溶媒”に溶かしたものです。
(化粧品と同じですね。タイプによって、油性、水性やエマルジョンタイプの「クリーム」だったり、「ジェル」や「乳液」だったり、スプレーできるようにした「液体」だったり、です。)
なので、溶媒の特性は、かなり「使い勝手」を左右します。
で、本来の機能成分、「日焼け止め成分」の話です。

「日焼け止め成分」の話;なぜ肌荒れする人がいるの?
「日焼け止め成分」には、「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱材」の2種類があります。
それぞれ、「剤」と「材」で書いているのは、私が素材関係の研究をしていた時期の習慣なのですが、「紫外線吸収剤」は原料状態で液状、「紫外線散乱材」は固形物(粉体)が多いためです。
具体的には、「紫外線吸収剤」は化学合成物質で、代表的なものは、「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」「オキシベンゾン」「t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン」などです。
「紫外線散乱材」は無機材料(セラミック)であり、「酸化チタン」「酸化亜鉛」が多く使われます。

「紫外線散乱材」である、「酸化チタン」や「酸化亜鉛」は、セラミックの非常に細かい粉末であり、紫外線をその表面で反射したり、粉末内部を通過する際に吸収したりします。
「紫外線散乱材」が主成分の場合、紫外線や可視光線が乱反射されるため、白っぽく見え、「白浮き」しやすくなります。
また、吸収効果が高いわけではないので、どうしてもUVカット率が低めになります。

一方、「紫外線吸収剤」である、「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」「オキシベンゾン」「t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン」などは、いずれも「光化学反応性」をもつ化合物です。
「化学式とか見るのもイヤ!」と言う人は、「ふ~ん」という感じで、なんとなく読んでください(笑)。
「光化学反応性」というのは、まさに「光が当たるとその光を吸収して、化学反応を起こす性質」です。
どの分子もその構造によって特定の光を吸収しやすい化学構造をしているのですが、「光化学反応性」をもつ分子は、光のエネルギーを吸収して一時的に構造変化を起こし、構造が戻る過程で吸収したエネルギーを熱などに変えたり、構造そのものが壊れて光のエネルギーを吸収したりします。
紫外線の吸収剤となるものは、「二重構造」や「ベンゼン環」などに共鳴電子をもつものが多く、この部分の構造が励起構造を取る事で紫外線を吸収するものが多いです。
ただ、全ての成分がきちんと元の構造に戻るわけではなく、一部の分子が分解してしまいます。日焼け止めに使われる「紫外線吸収剤」は溶媒に溶かすので、どうしても小さな分子が多く、分解すると、より小さい分子になって、揮発成分になってしまうことが多いのです。
この揮発分子が、ベンゼン環を含むこともあり、皮膚を刺激しやすく、お肌が弱い方が「かぶれる」原因になっていると言われています。

そこで、この分解性生物がお肌に作用するのを防ぐため、「マイクロカプセル」に「紫外線吸収剤」を封じ込めたものもあります。(ただ、取り扱いが面倒だったりしたので、最近はあまり見られなくなったような気がします。)

よく “日焼け止めは必ずしもカット率(SPFやUA)が高い方がいいわけではない”、とか、
“カット率が高い日焼け止めはお肌には良くない”、とか言われるのは、つまり、
『薄塗りでもカット率が高いものは、一般に「紫外線吸収剤」の割合が高く、光化学反応による分解生成物がお肌を刺激する場合があるから』なのです。

もちろん、配合成分によって分解生成物も違うし、お肌との相性もあるし、使い方も人によって違うので、カット率が高い日焼け止めを使ったからといって、必ずしもお肌が荒れるということはありませんが、確かにお肌が荒れる方もおられます。
小難しい話ですが、実際に肌荒れしてしまった時、こういうことを知っておくと原因を考えるヒントにもなります。
よく、「日焼け止めはカット率だけで選ばず、うまく組み合わせて使いましょう」とテレビで言ったりしますが、
「“うまく”って、どう“うまく”やるんだ? “大は小を兼ねる”的に、カット率が高いもの使っておいたらよくないの???」って思いますよね。
「肌荒れの原因はどうも日焼け止めのせいだぞ・・・」と思った時でもいいので、あらためて使っている日焼け止めの成分表示や“○○不使用”などの表示を見直してみて下さい。
ひょっとして・・・と思ったら、“紫外線吸収剤不使用”とか“ノンケミカル”タイプを選んだり、日焼け止めを長時間つけたままにしないようにしたり、あえてカット率が低い日焼け止めを使って極力UVカットウェアや帽子でUVカットしてみるなど、色々工夫をしてみられて下さい。

ちなみに、「日焼け止めは、ちゃんと適量塗らないと十分な効果が得られません」とよく言われますが、お肌の上の日焼け止めの膜の厚みが半分になれば、UVカット効果は半分近くに落ちます。
実は、取説や注意書きにある「適量」っていうのが、意外に多いんですよね。
なので、「顔の白浮き」などがイヤで薄塗りすると、かなりUVカット効果は減っています。
しっかり塗らなきゃダメですよ(笑)。
汗も注意が必要ですね。
汗の縦筋ができると、そこの日焼け止めが流され、「ちびまるこちゃん」みたいに、顔に日焼けの縦の筋が出来ることもあります。顔がかぶれるよりはいいですが、十分「ひょうきん」な姿を見せることにもなります・・・

で、やっと次の章が「UVカットウェア」です。
お願いです~! 読んでください~!

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「Snug as a Bug」等の生地特性計測は、福岡県工業技術センター 化学繊維研究所において技術指導・相談下で行っています。
また、記事をまとめるにあたり、下記の書籍・文献を参考・引用しています。

独立行政法人 国立環境研究所編 「絵とデータで読む 太陽紫外線 ―太陽と賢く仲良くつきあう法―」(東海大学総合科学技術研究所 佐々木政子 著)
「着るもので差がつく汗対策 平田耕造」(文 河合香織)ヘルシスト208,vol.35, No.4 July-August, 2011
佐々木政子 (2001) 光とからだ -目と皮ふへの作用-、運動生理学、11/12,4.
坂田俊文、佐々木政子 (1978) メディカルフォトケミストリー -光化学療法について-、化学工業、 29(3),309-316.
松尾 (2000) 3-1 光ではじまる皮膚障害-  サンバーンとサンタン、光が拓く生命科学 第4巻 生物の光障害とその防御機構、日本光生物学協会編、共立出版、65-79.
上田正登 (1999) 紫外線と皮膚がん、遺伝、53(5),25-29.

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