紫外線・UVカットの話 ー1ー オゾンホールで大騒ぎ!

紫外線の害・・・と聞くと、あなたは何を思いますか?

「最近、よく紫外線が危ないっていうけど、子供の頃は『どんどん日焼けしろ』って言われてたし、俺も真っ黒だったけど、何も問題ないよ」
それか、
「紫外線がシワ・シミの原因らしいわよ」
という方が多いのではないでしょうか。

確かにあまりナーバスになりすぎる必要はないし、子供はどんどん外で遊ばせた方がいいのですが、20年以上前、ある報告をきっかけに「オゾンホール」という言葉で大騒ぎになりました。
そして、「確かにこれは危険かも」と、珍しく迅速な国際協調で「フロンガス撤廃」などという大騒動にもなりました。実は状況はまだあまり変わっていません。
ちょっと時間が経って、「オゾンホール?フロンガス?紫外線?」という方もおられると思います。
子供さんをどんどん外で遊ばせるためにも、ご自身の美容のためにも、現在の紫外線の危険性を正しく知って、気を付けた方がいい点は抑えておいた方が絶対いいので、この記事をまとめました。

内容的にどうしても多くなるので、この記事が第一弾で何回かに分けてアップしますね。
今回は生命の進化に関わる話や、なぜ大騒ぎになったのかをご紹介しますね。
(まどろっこしいな~ 早く結論読みたいな~って方は、以前まとめた分がHP本体にありますので、こちらもご覧になって下さいね~)

 

紫外線が来なくなったから生命体激増?!

これ、今回まとめ直していて、一番、ハッとさせられたことでした。
地球というのは約46億年前に太陽系の惑星の一つとして誕生、最初は高温ドロドロの塊で、大気は主に二酸化炭素、水蒸気、窒素が占め、酸素はほとんどなかったと考えられています。
地球が冷えてきて液体の水が発生して原始海洋が形成され、20億年前頃から海中で藻類が増殖、光合成で酸素が生成され始め、その酸素が大気中にも広がっていきました。
で、大気中に酸素が増えてくると、徐々にオゾンも増えてきます。
後の章でお話しますが、紫外線は生物の遺伝子に損傷を与えます。紫外線殺菌も同じ原理ですよね。つまり、多量の紫外線が降り注いでいる状況下では生物は生きられません。

一方、オゾンは紫外線を吸収してくれます。
初期の大気成分では地球には大量の紫外線が降り注ぎ、海中はともかく、陸上では生物はとても生きられる状況ではありませんでした。
しかし、オゾンの増加によって、地球に降り注ぐ紫外線が減少。それまで、海中でしか生きられなかった生物が陸上に出られるようになってきたのです。
最初は植物が、次に動物プランクトンが陸上に進出。ついに動物が陸上に進出して行ったのでした~!
その後の歴史を見ても、火山活動による大気の変化(にともなう紫外線量などの変化)や超新星などから来る放射線などに強く影響され、多くの生物が死滅・変成を繰り返してきたのだそうです。

すなわち!地表に降ってくる紫外線は、地上の生物・種の繁栄・死滅に大きく影響を与えてきたし、これからも与えるんだそうです!
その紫外線の量に大きな影響を与えるのがオゾン量なのです!!
普段なかなかまとまらない国際会議で、産業界が大混乱に陥るのがわかっていて「フロンガス」撤廃でまとまったというのも納得・・・というほど、深刻な問題なのです~
お手柄!日本の気象庁! でも、それから大騒ぎ!!

実は、オゾン層が破壊され南極上空でオゾンが異常減少しているのを世界で初めて観測したのは日本の気象庁気象研究所の中鉢研究官です。
この報告で各国の研究者が「え?!」となりまして、同様の観測、原因の究明等が進められました。

結果、「オゾンホール」の存在が確認され、原因として、当時、エアコンの冷媒や半導体製造工程の洗浄剤などにフル活用されていた、「フロンガス」が関係していることがわかりました。

フロンガスは、非常に安定な物質であるが故に(目立たないけれども)いろんな所で活用されていました。
基本的にはガスなので利用や廃棄の過程で漏れます。
漏れたガスは、安定が故に上空まで分解せず上昇していきます。そして、大気圏に到達したところで、波長の短い紫外線(UV-Cの中でも短めの220nm以下)で光分解します。
フロンガスは炭素と塩素、フッ素の化合物で安定なためなかなか分解しない(この組み合わせは科学的に非常に安定していて、身近な例ではフライパンのテフロンコーティングもこれです。反応性が低いので料理がくっつかないけど、フライパンにもガッチリくっついているわけではないのでだんだんハゲテきます・・)のですが、一度分解すると塩素原子が放出されるためすごく攻撃性があります。
オゾン層でも連鎖反応的にオゾンを攻撃し分解してしまうため、1個の塩素原子が数万個のオゾン分子を分解すると言われています。しかもフロンガスは大気圏に100年以上滞留すると考えられています。
太古の昔から地球上の生命を守ってきたオゾン層が、フロンガス類が発明されてからの2~30年で急激に破壊されているのがわかったというわけです。

では、紫外線が体にあたると何が起きるのでしょう。
フロンガスはUV-B,Cを吸収するのですが、人をはじめとした生命を形づくっているたんぱく質や遺伝子DNAは、まさにUV-Bを吸収して変質します。
「卵をゆでると硬くなる」のはたんぱく質の熱変性です。
紫外線を吸収してもたんぱく質は変成し硬くなります。これがしわの原因の一つと言われますが、確かに野外競技のアスリートのしわは深い気がします。

遺伝子DNAに吸収されると遺伝子の並びに傷が入ります。この傷は完全に修復されるわけではなく、一部の傷は細胞増殖の過程で転写されガンの原因の一つになっていると考えられています。
実際、この時期、オーストラリアでの疫学調査で、子供の頃に紫外線を浴びているほど皮膚がんになりやすいという結果が出て、とくにオーストラリアで紫外線をいかに防ぐかという取組みも本格化しました。
(この辺りの詳しい話は、また次章以降で・・・)
もちろん、日本でも大気中のオゾン量減少とともにUV-Bが地表に降り注ぐ量が増え、社会問題化していきました。

つまり、大まかな流れとしては、
「あれ?南極でオゾンが減ってるんですけど・・・」「マジ?そんなことある?」
「あらら・・・、オーストラリア辺りにオゾンホールができてて、UV-Bが増えてるんですけど・・・」
「それヤバクね?UV-B増えたら人って生きれるんだっけ?」
「いや、オーストラリアで皮膚がん増えてますがな・・・ だいたい、なんでオゾンホールできたの?」
「なんかフロンガスが原因のような・・・」
「え?! みんなに使うなって言わないと・・・」
「フロンガスとか、世界中でむちゃくちゃたくさん使われてるよ! そんなの言うと大騒ぎになる!」
「と、とりあえず、みんなを集めよう!」
で、実際大騒ぎになって、産業界も大混乱に陥ったのですが、それでも各国の危機感は強く、後にも先にも始めてというくらい結束して「フロンガス撤廃」が決まり、世界でオゾン層の回復に取り組み始めました。
実際のところ、残念ながら、オゾン層の破壊は止まったようだけど修復までは進んでないというのが現状です。

実は、私自身、技術者として20年以上前の「フロンガス撤廃騒動」に関連した商品開発(フロンガス類の分解装置など)を行っていました。その後、何の因果か、「UVカットのベビーウェア」を全国に普及させる役割を担ったので、科学的に詳しい話もかけるつもりでいたのですが、あらためて見直すとハッとさせられました。
いまだに、「この時ほど国際社会が危機感を持って結束したことはない」という方もおられますから、ホントに深刻なことなんですよね・・・。

次章以降では、紫外線が人の体に与える影響をもう少し詳しく見ていきます。
お楽しみに~

次章「紫外線・UVカットの話 -2- 紫外線の害とは?」はこちらから

なお、Snug as a BugのUVカット生地についての性能データなども別章でシリーズとしてまとめています。よければ、こちらからご覧ください。「Snug as a Bug の生地 特性データ その1」

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記事をまとめるにあたり、下記の書籍・文献を参照・引用しています。

独立行政法人 国立環境研究所編 「絵とデータで読む 太陽紫外線 ―太陽と賢く仲良くつきあう法―」(東海大学総合科学技術研究所 佐々木政子 著)

「着るもので差がつく汗対策 平田耕造」(文 河合香織)ヘルシスト208,vol.35, No.4 July-August, 2011

Wayne, R. P. (1911) 9. Evolution and change in atmospheres and climate. Chemistry of Atmospheres Second Edition, Clarendon Press Oxford, 404.

Blake, A. J., Carver, J. H. (1977) The Evolution Role of Atmospheric Ozone, J. Atmospheric Sci. 34, 720-728.

気象庁(2005) 3 オゾン層の長期変化傾向、オゾン層観測報告:2004, 30

Sasaki, M., S. Takeshita, T. Oyanagi, Y. Miyake, T. Sakata. (2002) Increasing trend of biologically active solar UV-B irradiance in midlatitude Japan in 1990s. Opt. Eng., 41(12), 3062-3069.

 

 

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